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【建築家の文学館巡り 第8回】
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--司馬遼太郎記念館--
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大阪府東大阪市下小阪3−11−18
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今まで私は建築というより文学的興味で7つの記念館を訪ねてきました。今回初めて建築的興味が優先した文学館探訪となりました。というのもこの建築の設計は世界的に著名な建築家安藤忠雄氏によるものだからです。尊敬する建築家のひとりです。
近鉄八戸の里(やえのさと)駅で下車し徒歩10分ほどで文学館へ着きます。けっこう来訪者も多いのでしょう。駅には案内地図が置いてあります。司馬氏らしい庶民的な雰囲気のまちだなあ、と感じます。小雨のなか文学館のサインが目に入ってきます。これからどんな空間が待っているのだろう・・建築家としての血が騒ぎます。
文学館は司馬氏の自宅の庭に建てられています。門を入るとほどなく自宅書斎を外から眺める演出になっています。司馬氏存命中そのままの状態で保存してあり、その生々しさに複雑な気持ちになります。我に帰って案内に従って進むと安藤氏らしい建築の世界が始まってきます。この辺りの設計者の誘いは楽しくもあり戦いでもあります。違う世界のつなぎ方は巧みで<さすがにうまいなあ>と率直に思いました。ゆるやかに円弧を描くように庭の景色を見ながらエントランスに導いていく設計は、じらされるようでもあり期待感も大いに高まります。限りある敷地を実に大きな世界に感じさせます。
室内に入るとそれまでの期待感に比してやや昂ぶりが下がる思いがしました。床から天井まで見渡すかぎり本で埋め尽くされたアイディアはすばらしいのですが、実感としては期待ほどの迫力を感じなかったのです。それは明るさによると思いました。やや明るすぎるのではないか。壁面に設けられたステンドグラスの幅が私には大きく感じられ、半分ぐらいでもいいのではないか、と考えたのです。後日ある人から安藤氏自身も、もうすこし暗くすればよかったとどこかで書いていたよ、と聞かされ彼ほどの建築家でもまだまだ思い通りにはならないのだなあと妙に安心しました。
司馬氏の作品はあまり読んだことはありません。建築を訪ねたことで興味が沸き少々調べてみました。スタートは産経新聞記者であり、終戦時これからの日本について殺伐とした気持ちになったことから、元来好きであった歴史に学ぼう、と道を定めたそうです。<二十一世紀に生きる君たちへ>という文章の中で歴史について、<それは大きな世界です。かって存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです。>と書かれています。同じく歴史好きな私には素直に受け入れられる言葉です。
この記念館は国盗り物語の愛読者であった中学生のグループの電話が建設のきっかけになったといいます。小雨の一日、司馬遼太郎の世界にすこしだけ触れた私は、その中学生の少年たちの恩恵を蒙ったわけです。その逸話を素直に清清しく思い、大阪まで来てよかった、と爽やかな気持ちで帰途に着きました。収穫の大きかった日のビールの味は格別です。記念館で買い求めた資料に目を通すうちに司馬氏の絵が目に入り、こんなにも絵がうまい人だったのかと驚きました。すばらしいデッサン力、勢いのある筆力。また気になる作家がひとり増えてしまいました。
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市民とメディア研究会・あくせす会員
木野秀明
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