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> ■建築家の文学館巡りindex 【建築家の文学館巡り 第5回】
記念館は台東区竜泉寺町という所にあります。吉原遊郭の隣に位置し一葉はこの地に21歳から22歳にかけて住みます。兄の早世のため一家を支え商売をするのですが、うまくいかず困窮の限りであったといいます。少女のころから読書が好きで学業も優秀でした。 記念館に入り一葉の自筆原稿を見たとき、その美しい筆跡に感動しました。幸せに薄い人だったという知識はありましたが、記念館で知った彼女の人生は想像以上に厳しいものでした。東京朝日新聞の記者だった半井桃水(なからい・とうすい)に淡い恋心を抱き書き送った手紙にはほっとします。一葉一家が住んでいた家が模型で再現されていますが、情けないくらい小さく粗末です。ここで彼女は桃水に手紙を書き胸を躍らせていたのです。 記念館はこの地の住民たちの強い意志によって建てられました。ここで一葉が名作たけくらべの構想を練ったことに誇りを持ち、共同出資で土地を買い求め台東区に寄付したことで建設が決定したのだといいます。建物は何の変哲もない平凡極まりないものですが、名作が時を越えて人々を動かしたことに感銘を覚えます。吉原は千束と名を変え往時の名残は全く留めていませんが、まちなかにこのような施設があることでまちの魅力は深まります。まちや建築は時間を刷り込んでいきます。景観に時間が重なったまちはひとを魅了します。記念館へは三ノ輪の駅から歩きました。下町独特の細い路地、建てこんだ商店、住居が続き、まったくさりげなく記念館は佇んでいました。それは現実感と生活臭あふれるまちなのですが、記念館の中はまったく別世界です。この対比がまた建築家のぼくにはたまらないのです。 明治29年11月23日24歳で永眠。もうそれから107年がすぎようとしています。東京の下町は今日も静か。吉原の象徴であった<見返り柳>に夏の夕方の風がそよいでいます。路地を歩き商いの声を聞きながら、時を越えた旅ができたことを感謝します。縁台に座りうちわをあおぐ人の顔がやさしく感じられます。樋口一葉・・夏子と自らを呼んだ彼女の想いが漂っているようでした。
市民とメディア研究会・あくせす会員
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