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マスメディア世界は公共性をめぐって大揺れだ。大テレビ局は楽天などIT企業との格闘が続き、朝日新聞・産経新聞の捏造事件、取材源をめぐる倫理や個人情報関連の匿名報道問題も波紋を広げている。しかし何といっても今年は"NHK問題に始まりNHK問題に終わる"感じが否めない。ほとんどの人たちが関わっている受信料制度が危機にあることも、放送への関心を高めている。
「緊急シンポジウム・なぜ受信料を払うのか〜徹底討論『NHK新生プランを問う』〜」が、六日東京大学で開かれ、ジャーナリストや学生、市民ら二五〇人が熱い議論を交した。主催は「放送の公共性の〈いま〉を考える全国連絡協議会」と「放送の公共性を構想する研究者会議」。「NHK新生プランをめぐって」「受信料制度はどうあるべきか」「政治介入と公共放送」「私たちが求める公共放送」の四つのテーマに沿って、十四人ものパネラーが問題提起し、参加者をふくめた六時間にもおよぶ大討論になった。参加を求められたNHKは、断ったという。このへんがNHKの愚かしいところだ。
この春、理事のほとんどを入れ替えたNHKは、六月、イギリスBBCをモデルとして「NHKの"約束"」とその評価委員会設置を発表し、九月には、番組の充実、業務改革、受信料の公平負担を中心とした「新生プラン」も発表した。他方新しく設置した「デジタル時代のNHK懇談会」での前例のない率直なやりとりはNHKのホームページで見ることができ、大変おもしろい。シンポはこうしたNHKの対応が、はたして政治介入を招いてきた体質を改善できるのか、受信料制度や新しい時代の公共放送はどうあるべきなのかを問いかけた。
論点は多岐にわたるが、受信料制度がNHKという公共性のチェック機能を果たしてきた事実、政治介入・番組改ざん問題を不問に付したままでは解決が難しいこと、信頼感が失われている中では"新しいプラン"を討論する環境が整っていないこと、信頼の基礎には視聴者・市民との対話の姿勢やジャーナリズムとしての基本要件が不可欠であること、新しい時代の放送の公共性とは何かを問い直さなければならないこと、などが多くの論者に共通していた。私も「京都三条ラジオ・カフェ」のような<市民・住民の発信番組>や、民放でのスポンサーのつかない実験番組なども加えた新しい放送の公共性について力説した。
中でも印象深かったのは、問題の『ETVスペシャル』のディレクター三人が、促されて現場の状況を語ったことだ。一人は、従軍慰安婦番組の改ざん問題に触れ、職場を"沈黙"が支配して自由な話ができなくなり戦争にかかわる番組が企画しにくくなったことにふれ、別の一人は現在のNHK環境の中で、少数派の人々を取り上げ多様な価値観を表現する困難さを赤裸々に報告した。勇を鼓した発言は参加者全体の胸を打った。きわめて危うい所ではあるが、放送への愛情に溢れた人たちがまだ大勢いることが確認できた熱いシンポだった。
市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫
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