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NHK以外のテレビ局は、ドキュメンタリー番組は"数字(視聴率)が取れない"から深夜にやるものと決めてしまっている。ドキュメンタリーは本当につまらないのか?「山形国際ドキュメンタリー映画祭」(十月七日〜十三日、山形市)に学生と行ってきた。一九八九年にはじまったこの映画祭は今年で九回目。山形に居ついた故・小川伸介監督らの熱い思いに応えた、市民と行政の絶妙な協働が、映画祭に世界的な評価を定着させてきた。参加した百五十本の作品は、<世界のいま>が直面している病巣の深いレントゲン写真であり、あるいは富と効率に無縁な人々が織りあげた多彩な曼荼羅である。日本のテレビや商業映画では出会わない"眼からウロコ"の世界ばかり。八会場が用意されていたが、評判のプログラムはどこも長蛇の列。
国際コンペ部門の審査員特別賞は『ダーウィンの悪夢』(フーベルト・ザウパー監督)。アフリカ最大のビクトリア湖(タンザニア)にかつて放された巨大魚ナイルパーチは、二百を超える在来種を食べ尽くした。生態系の激変、ナイルパーチを加工しヨーロッパや日本へ売りさばく工場、残りの腐敗した魚片を揚げて食べる人々。エイズが蔓延し崩壊していく村々で、女性たちは身を売って暮らし、ストリートチルドレンは夜をさまよう。輸出される魚を運ぶロシア製飛行機の帰りの貨物は、アフリカ各地の内戦に使う武器らしい。操縦士たちに乱暴なセックスを強いられる娼婦は「パソコンを習いたい」とつぶやきながら、「タンザニア、タンザニア……」と淋しげに歌う。
グローバリズムという巨大魚に食い尽くされながら、先進国の豊かな食卓を支えることでやっと成り立つ住民たちの生活は、凄惨というほかない。こうした現実はもちろん衝撃的なのだが、マスメディアに依存する情報回路からは、私たちは自分の置かれている時代というものを正確に知ることができないという事実にも考えさせられる。
映画祭の大賞を取ったのは、世界最大の三峡ダムで水没・移転する人々の葛藤や不安を捉えた『水没の前に』(リ・イーファン、イェン・ユィ監督)。最優秀賞『ルート181』は、パレスティナ人監督ミシェル・クレフィとイスラエル人監督エイアル・シヴァンが、パレスティナを二分する境界線をたどりながら、さまざまな背景を持つ人々に出会い、国家や民族、差別を浮き彫りにし、未来を見つめた五時間もの熱い作品だ。
初回から続けられているプログラム「アジア千波万波」が、日本やアジアの新進作家を発掘してきたことはよく知られているが、さらに今年は在日外国人、特に韓国・朝鮮に関わる作品特集「日本に生きるということ」や、一人称ドキュメンタリーの特集も注目を集めた。爆発しているかと思えるほどの多彩な映像群は、どれもおもしろい。こうして見ると、ドキュメンタリーがつまらないのではなく、メジャー放送局のディレクターたちの構想力が貧困なのではないか。これは放送界のグローバリズムの結果か。
市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫
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