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京都新聞「放送時評」
05年8月
「戦後六〇年」

 今月の「戦後六〇年」関連ドキュメンタリーや特集は集中花火のようだ。特に不祥事や政治介入のイメージを回復したいNHKでは、六月ごろから"戦後六〇年もの"が放送されはじめた。

 看板『NHKスペシャル』では、通常、土・日の放送枠を拡大し、被爆者・核兵器問題、コソボ問題、空襲の実態などのドキュメンタリーや、ドラマ「象列車がやってきた」、靖国問題を考えるドキュメンタリーと討論のシリーズなど、久しぶりに直球主体で勝負したと言っていいだろう。Nスペ以外でも、「最後の一枚 戦没画学生・いのちの軌跡」(十二日『にんげんドキュメント』)、「アジアの中の日本〜戦後六〇年・互いの理解をどう深めるのか〜」(十五日『日本の、これから』)、またBSでは十五日の「60年目の対話〜フィリピン・裁かれた対日協力者たち」をはじめ、連日『BSドキュメンタリー』などで地上波とは一味違った角度からの番組が並べられている。各局のローカル時間帯でも、制作現場の意気込みがうかがえる企画が少なくない。

 日本の未来像やアジア諸国との関係にも深刻に関わるシリーズ番組「靖国神社〜占領下の知られざる攻防〜」(十三日)、「靖国問題を考える」(十四日)も興味深かった。今国民の七五%が関心をもつというが、これまでこうした核心の課題は巧みに避けてきたNHKが、連夜このテーマに正面から取り組んだという姿勢を率直に評価したい。

 十三日の番組では、終戦後、国家と神道のつながりを断ち、軍国主義の根絶と靖国神社の廃止をねらったGHQと、靖国を残そうとする日本政府・旧日本軍・神社関係者とのかけひきを、日米に残された資料や関係者の証言から再現。宗教法人化によって生き残った激しい攻防を描いたもの。第二夜には、占領終結後にサンフランシスコ条約に違反してA級戦犯を強引に合祀した経過や、厚生省のリードによって事実上靖国の国家管理がすすみ、天皇や総理大臣の公式参拝への道が開かれたことが明らかにされ、スタジオで討論される。全体を通じて、真の民主化を怖れた日米指導層の暗黙の合意がこの過程に密かに埋め込まれていたこと、未だに戦争の基本的な総括が行なわれていないことが浮かび上がってくる。

 私の叔父はフィリピンで戦死し、強制的に靖国に合祀されている。また戦時中に疫痢にかかり薬もなく放置されて死んだ私の姉や、空襲による無数の死者たちは、国家に選別されて顧みられることはない。靖国の前身、東京招魂社は官軍の戦死者を祀ったもので、すべての戦争犠牲者を追悼したものではない。勝者・強者のみの強権的合祀という行為がはたして平和の礎となるのか。死者を悼むとは何か。
 
今月の連続ヒットを "八月ジャーナリズム"に終わらせてはならないのは当然だ。現場の健闘を心から祈りたい。再放送でのイチオシは、二四日深夜の「そして日本は焦土となった〜都市爆撃の真実」。私のような平均的日本人の発想を超える隣人・アメリカの一面を知る上で貴重だ。

市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫