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京都新聞「放送時評」
04年8月
「夏休みこども科学電話相談」

 「空はなぜ青いのだろう」と聞かれたら、一瞬はっとするのではないだろうか。
こういう素朴で根源的な問いに答えられるのは、詩人か哲学者だろう。私が最近ハマっているのは、こういう問答のラジオ番組『夏休みこども科学電話相談』(NHKラジオ第一)である。午前中だけの時も、午後もやるときもある(高校野球の時は中止)。夏休みの小中学生を対象にしたこの番組は、もう二〇年以上も続いている長寿番組である。

  番組の形式はいたって簡単だ。こどもからの電話による質問に、スタジオに待機している魚・動物、昆虫、天文・宇宙、植物、野鳥、科学(一般)の六部門の専門家が交代で答えるだけである。こどもたちはアナウンサー(坪郷佳英子、村上信夫、山田敦子の三人が交互に担当)に導かれて、名前、学年、住んでいる所、質問の内容を告げる。病院の予診スタッフのように、アナウンサーが要領よく質問の生まれた状況を聞いてから、専門家が登場する。

こどもの質問だから易しいかと思うと、そうではない。最近印象に残っている問いを思い出すと、「雷はどうして光るのか」「猫はどうしてボールとじゃれるのか」「地球の中はどうなってるか」「セミは飼えるか」「花に水をやらないとどうして枯れるのか」「スズメはなぜ小さいの」などなど。私も思わず聞いてみたい質問ばかり。大人のリスナーも多いようだ。こうした基礎的な疑問を、五分足らずの対話で納得させるのだから大変だ。

まず質問を受けるアナウンサーは、緊張している子どもたちをリラックスさせながら番組空間に導く。プロとはいえ、対応は実に親しみやすく、テンポも軽快だ(近頃、プロでないプロが多いですね)。つづいて登場するそれぞれの領域の専門家である多摩動物公園の課長、川崎市青少年科学館の学芸員、日本野鳥の会会員といった回答者の絶妙な対話もすばらしい。時にカウンセラーではないかと思えるような、こどもの素朴な目線、こどもの柔らかい心に寄り添った暖かい話しかけで、質問の核心に近づいていく。

  担当の高橋プロデューサーによると、質問は一日に数百人、一ヶ月で一万五千人にもなるという。同じこどもや同じ質問にならないよう調整も必要だし、一日に答えることができる質問は三〇程度だというから、競争率は一〇〜二〇倍にもなる。幸運にも“出演”できたこどもも、結果的に“出演”できなかった大半のこどもたちも、そこでさまざまなことを学ぶに違いない。挨拶や質問のプレゼンを通しての大人とのコミュニケーション、NHKやメディアの扱い方、自分の体験と科学知識を結びつける面白さなどなど。番組は巧まざるメディアリテラシーでもある。私事で恐縮だが、私は幼い頃父とともに出たクイズ番組の体験と、社会問題に触れるのを避けた高校教師への疑問から放送局を志した。

  今ならこう質問する。「NHKは自然や科学に関する番組は面白いですが、なぜ社会問題を避けたがるのですか?」

市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫