■あくせすWebサロンTOP
> ■放送時評index
大きなニュースが相次ぐことは、世の中の幸せと相反する場合が多いが、今月五日から始まった『報道ステーション』(テレビ朝日)は、幸か不幸かニュース運に恵まれたスタートといえる。イラク・中東情勢が緊迫し、人質事件が相次いだこともあり、どんなスタンスを取るのだろうかと私も意識して視ている。
良くも悪くも旗幟鮮明な番組である。誰もがどうしても『ニュースステーション』と比較してしまうだろう。そして「なんだ、ほとんど変わっていないじゃないか」と、半ばがっかりし半ば安心する。名物番組の跡を継ぐのは、さぞかしやりにくかろう。新しさを狙いながらも、これまでの支持層も離したくない。私もニュース番組の改訂を何回も経験したが、一定の評価を得て放送しているものを改変するのは本当に難しい。
『報ステ』のウリは、何と言っても独創的で饒舌なスポーツ中継などで知られる古舘伊知郎のニュースさばきであり、中国報道や「アタを追う」企画などで知られた朝日新聞・加藤千洋記者の解説だろう。古舘は前任者・久米同様「ニュースは素人」を自認し、「事件を起こすのも、被害を受けるのも人間。常にそういう本質に立ち返りたい」という。果たして成功しているのか?始まったばかりなので、一言で批評するのは難しいが、やや力が入りすぎ白黒を急ぎすぎるきらいがあるが、意気込みは十分感じる。スタジオの音響設計のせいか、大声で叫んでいるように聞こえる点は損をしている。
番組の意気込みは、社会派レポーター長野智子の配置や、イラクや東チモールなど九カ国・地域で活動するNGO「ピース ウインズ・ジャパン」のスタッフ岸谷美穂を、在籍のままリポーターとして、紛争地や貧困地域などを取材させる姿勢にも現れている。長野は一六日の「三人の人質到着」のドバイにも急行し、報道陣がシャットアウトされた現場から果敢にレポートしていた。
また二〇〇〇年十一月からバグダッド陥落後の去年八月まで、イラク北部のクルド人自治区などで人道支援活動の現場責任者を務めていた岸谷は、二〇日放送の特集で、支援活動の拠点だった病院を再訪したり、巨大モスクに住み着いたシーア派の貧困家族に密着取材するなど、自らの活動に根ざした現実を伝えた。“自己責任・突撃特派員”レポートだけで本質的な報道から逃げるメディアや、人質責任のなすりあいをしている政治家にぜひ見せたい。岸谷には今後もNGO在籍のままレポートしてもらうという。
“よいしょ”ついでに言うと、『報ステ』には「ご意見募集」サイトがある。戦争・政争だけでなく、食の安全問題、年金問題など幅広く視聴者の意見募集をしている。
当然といえば当然だが、当然のことをしない放送局ばかりの中で、その意気を買いたい。前番組は“伝統的”に政治家からの強い圧力があった。そうした良き伝統の下で蓮見プロデューサーは「生活者視点、まっとうな報道番組」をめざすという。
その意味での旗幟鮮明な番組の健闘を祈りたい。
市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫
|