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年末から今年へかけて、硝煙の匂いが急速に強くなってきた。各種世論調査では、国民の半分以上が「イラク派兵反対」にも関わらず、沈黙していたNHKが「21世紀日本の課題 シリーズ・安全保障」(『NHKスペシャル』十二月十八日〜二〇日)三本に取り組んだ。一回目が「徹底検証・日本の備え」、二回目「変わる自衛隊・現場からの報告」、三回目「討論 日本の進路を問う」。内容はさておき、直球である。その意気やよし。かつてNHKは、世論が分かれる政治の節目節目において、多角的な取材や電話参加をふくめた大型の特集番組を企画して、世論を喚起してきた。近年はだんまりを決め込んできたようだが、公共放送として久々に現実と格闘したことをまず評価したい。
中でも「変わる自衛隊・現場からの報告」は、ど真中の重い直球だった。生半可なことでは撮影が許されないであろう自衛隊の訓練現場に、カメラが密着してゆく。
市街地での検問、自爆攻撃を想定した訓練など、従来の戦闘訓練の枠を越えて“顔が見える敵”との戦闘にまで、訓練がエスカレートしている。また、アメリカ中央軍に派遣され、次第にアメリカの戦略に組み込まれている外務省や自衛隊の活動の知られざる現状ものぞかせてくれる。「インド洋での補給」も大幅に拡大している。
国会での論議・承認なしに、ここまで外務省や自衛隊が参加していることに驚く。関東軍が作る既成事実に引き摺られていった先の戦争を想起させられる。その実態に肉薄する取材陣に拍手する。
この番組のもう一つ優れた点は、国民の合意がないままこうした現実に立たされている自衛官ひとりひとりの、率直な表情や戸惑いを記録していることだ。専守防衛に徹してきた自衛隊では、隊員本人も家族も、戦闘行為は行わないはずだった。
人に本気で銃を向けるなどと考えたこともない人がほとんどだという。ある自衛官は「表情のある人を撃てといわれる時代になってしまった。そんなことが我々に本当にできるのか」と自問する。
取材スタッフの一人は、「自衛官も人間であり、国民です。実態としては戦場である場所での支援活動を「任務」として命じることが許されていいのだろうか。ひとりひとりの命よりも大切な「国際貢献」「国益」などというものがあるだろうか。
自衛官に人間として向き合った結果を伝えられるのではないかと思って取材した」と語る。これだけの信頼関係を築いた取材の深さに敬意を表したい。
第三夜の討論第一部は、中曽根康弘、後藤田正晴、大江健三郎らによる激論だが、憲法の枠を越えている現実を見た後では、いかにも物足らない。二部のゲストに防衛庁長官がいたのも文民統制の原則からアンフェアだ。三夜もの特集で、今後の日本を担う論理的な草の根市民、生活者代表的な論客が登場しないこと、また中東・イスラムをふくむ専門家抜きでの議論にも大きな疑問が残る。長期的・共生的な構想を欠く政権の場当たり的な体質に、危なっかしさを感じさせた特集だった。
市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫
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