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NHKスペシャル『こども/輝けいのち』が評判だ。おととい六日の『裸で育て 君らしく』は、大阪・アトム共同保育所「ぞう組」の五歳児たちの一年間を凝視した作品だ。
いじめや取っ組みあいのけんか、 “心を裸にして”命いっぱいに生き、脱皮してゆく子どもたち。全力で生きる彼らだけでなく、彼らの力を強く信頼しているスタッフの力がみごとだ。さらにいえば、一八人の子どもたちと、一年間共に歩んだ撮影クルーの変化をも彷彿とさせる。
マスコミには、「動物・子どもネタ」にハズレはない、という安易な信仰がある。タマちゃんやヘギョンさん報道の類のことだ。このシリーズはそうした“安全パイ”とは対極の位置にある。
シリーズ一回目(二月)は、大阪・西成こどもの里で、挫けそうな親たちを励ましながら生きる子どもを見つめた『父ちゃん母ちゃん、生きるんや』、二回目が長野・波田中学野球部の義足のエース三澤拓君たちを描いた『15歳・拓(ひらく)の旅立ち』、三回目『情熱のホームルーム』は金沢市立南小立野小学校四年一組の「いのちの授業」を通して、それぞれに心の絆を結んでゆく子どもたちの群像、四回目は東京・聖路加国際病院小児病棟で難病とたたかい、死を視つめる子どもたちに寄り添ったものである。
身近な人の心身の病気と直面し、死と向きあい、貧しさや差別のなかで精いっぱい魂や知恵を奮い立たせて生きる子どもたち。それぞれの指導者は、教育のプロとして子どもに徹底して「いのち」や「関係」を考えさせる。取材は、一歩間違えばトラブルになる危険を孕んでいる。きれいごとで済んだはずがないだろう。番組も予定調和の結末に導かれてゆくわけではない。それでも、この子どもたちから、ああ生きてゆくことは素晴らしい、というすがすがしい勇気をあたえられる。
群像やチームを描く時に、並みのドキュメンタリーでは手軽な狂言回しとしてスターをつくることが多い。視聴者もまたスターを求めたがる。そうした番組はわかり易いが、胡散臭さもまとわりつく。誰もが胸に手をあてれば思い当たるように、子どもは自分を子どもだとは考えていない。ひとりひとりの人間だ。
このシリーズの一貫した姿勢は、ひとりひとりの人間としての子どもと向き合うということを大切にしている「場」を発見し、普通の子どもたちの中に潜んでいる力を描き出してきたことだろう。ドキュメンタリーには、信頼関係と想像力と時間が必要だ。難問や批判を解決するチームワークも不可欠だ。担当の日野原直明プロデューサーは「子どもや周辺の人たちとの接し方、コメントひとつにも細心の注意を払う。たとえ番組として優れたものであっても、誰かを傷つけては番組の意味がないと、ディレクターと話す」という。
さまざまな実験映像が溢れていた『ETV特集』が消えたNHKでの、久々の本格派ドキュメンタリー・シリーズだが、今月十三日が最終回とは、残念だ。
市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫
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