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京都新聞「放送時評」
03年2月


大きな事件や出来事が次々に起こり、メディア上での事件の消費は年々速くなる。これだけはしっかり魂に刻んで憶えておこうと堅く決意したはずなのに、メディアも視聴者も、次の刺激を求めてむなしくさまよう。
近年、心に刻んでおこうと決めたことのひとつに、阪神淡路大震災の記憶をあげる人も多いのではないか。それぞれかけがえのない衝撃の光景であったり、その深い傷と悲しみの中で、見知らぬ人からもらった優しさや心のふれあいの記憶であったりする。私もメディア関係の授業には、毎年必ず神戸のジャーナリストを招いて、神戸とジャーナリストの今について語ってもらっている。
 八年目の一月十七日、神戸はどのように伝えられるのだろうかという期待をもってテレビに向かう。NHK大阪からは『生活ほっとモーニング』『とっておき関西』『関西クローズアップ』『NHKスペシャル』などの枠で、多くの力作が発信されていた。『Nスペ・減災』では、災害を止めるという空論ではなく、少しでも現実的に被害を減らそうという新しい発想が必要だとして、少ない資金で耐震構造に変えられる住宅の工夫など、説得力ある提言をしていた。NHKはテクノロジーの話になると力が入るのが面白い。
 二月一日関西テレビ『ザ・ドキュメント』は、壊滅的被害を受けた神戸市長田区の現在を追った。紙製靴箱を組み立てている独り暮らしの老人の素顔、二四時間無認可託児所「こぐまプリスクール」の日常を通して、くらしの断面を深く切り取って見せたドキュメンタリーだ。なぜか系列のフジでは流れない。TBS『筑紫哲也NEWS23』、テレビ朝日『ニュースステーション』は、同じ長田から「FMわぃわぃ」や町工場のレポートを挟んだものの、アリバイ的な編成に感じられたのは残念。
 しかし、なんといっても地元サンテレビの企画は多彩だ。復興住宅の課題、震災孤児たちの今、支援NPOの活動、家賃が払えない被災者の問題、遺族や県外避難者の現在など、課題を追う番組が目白押しで、地域に生きるメディアの鋭い取材力や強いポリシーを感じさせる。デジタル化問題もからんで、最近「地域密着の必要性」が強調されるが、空回りの議論も少なくない。ローカル局のありかたとして、サンテレビの姿勢は、一つのモデルではないだろうか。
 もう一点、改めて感じたことは、普段着のラジオ番組のしたたかな報道精神である。今年度民放連のラジオ放送活動部門近畿最優秀賞に選ばれたMBSの『ネットワーク1・17』は被災者に寄り添って続けてきた番組。多くの制作費をかけたテレビとちがって、ラジオからはパーソナリティとリスナーの信頼関係、リスナーどうしのつながりが溢れてくる。競争にあけくれる社会では死語になりかけている「支えあう」「絆をむすぶ」といった台詞が、ラジオでは素直に交わされる。八年前、誰もが体験したこの優しさや想像力を記憶し続けていれば、マスメディアが今ほどささくれて苛々してはいないだろうと感じるのは私だけだろうか。

市民とメディア研究会・あくせす会員
津田正夫